東京事変の「女の子は誰でも」という歌で、椎名林檎さんが「女の子はお砂糖とスパイスとで出来てる」と歌っていました。
この場合のスパイスって、シナモン&ジンジャーでしょうか、それともニンニク&唐辛子でしょうか。
「女の子」には、そのどっちの面もあるような気がするんですけどね。
…それはさておき、今回はインド菓子に使われるスパイスのお話です。
インド菓子ってそれこそお砂糖とスパイスでできていそう、っていうイメージちょっとありませんか?
ではインドのお菓子に使われるスパイスって何でしょう?
私はインド菓子に興味を持つようになるまで、なんとなくシナモン&ジンジャー、みたいなイメージを持っていました。
お菓子に使うスパイスってまあそのへんだろうと。
…ところが!
インド菓子に主に使われるスパイスは「カルダモン」、…ほぼ「カルダモン」一強状態なのです。
そして私が「インド菓子にはこれじゃないのかな」と思っていたシナモンやジンジャーは、基本お菓子には使わないのです。(チャイには使いますが)
インド菓子を作っているとき、インド人シェフに「シナモンは入れないんですか?」と聞いたところ、
「え!?シナモンはカレーとかの料理に入れるものですよ。お菓子には入れませんよ!ww」
と言われたことがあり、正直びっくりしました。
そうか~~シナモンってインドではお菓子に使うものじゃないのか~~~~
そしてシェフは「お菓子にはカルダモンでしょう!」と言ってましたね…
そうか…やっぱりカルダモンか……!
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実は私のカルダモンとの出会いは、もともとはインド菓子ではなく、フィンランドのお菓子で、でした。
昔フィンランドに行ったとき、ケーキからパンから焼き菓子から、何から何まで食べると奇妙に「甘爽やかな風味」がして。
奇妙、と言ってしまいましたが、そうなんですよ…ごめんなさい、私はその風味がその時どうも苦手で。
だけどその苦手な香りが焼き菓子という焼き菓子についているもんだから、フィンランドに滞在していた10日間のあいだ、「もういいかげんにしてくれ!!こんな変な香りつけないでよ!!せっかくのケーキが台無しじゃん!!」とキレてしまってました…理不尽な怒り…
で、その奇妙に甘くて爽やかな香りの元が「カルダモン」というスパイスだったのです。
そしてこれが私が人生で初めてカルダモンをはっきりと意識した、まさにカルダモンとの出会いの時だったのです。
フィンランド人はリコリスだのサルミヤッキだのの猛烈な味(失礼)のお菓子が好きだし、ちょっと味覚が変わってるんだろなー (めっちゃ失礼) …とフィンランドにいる時は思っていましたが…
不思議なもので、日本に帰ってからなぜかあの甘爽やかな味が恋しくなり…
ムーミンカフェでフィンランドの菓子パンを買い、ああそうそう、この香りだよ!!と喜び…
でもちょっと足りないかなー、もっとカルダモンを効かせてほしいなーなんて思ったりもし…、
…気づけばなんとスーパーのスパイス売り場でカルダモンパウダーを買い、毎朝のトーストなどにかけて食べるようになっていたのです!!
そう、私はいつの間にやらカルダモンが大好きになっていたんです…(フィンランドではキレてたくせになんやねん)
第一印象は最悪だったのに、、、まるで少女マンガ。まるで恋。
で、そこからさらに時は流れ…
今はインド菓子でその甘爽やかな香りを楽しむようになったのでした。
ほんといい香り、大好き。
カルダモンはショウガ科の植物の種(タネの入った紡錘形の種子鞘)で、ヒンディ語ではイライチと呼ばれています。
グリーンカルダモンが一般的ですが、ブラックカルダモンというちょっと大きめなものもあり、香りも違うみたいです。が、私はまだグリーンカルダモンしか使ったことがないのでブラックカルダモンについてはよく分かりません。すみません。
ウィキペディアによると、ブラックカルダモンはグリーンカルダモンよりスモーキーな香りがするようです。
カルダモンはカレーやチャイにほぼ必ず入っているので、実はほとんどの日本人がその香りを無意識にでも知っているんじゃないかと思います。まあカレーはいろんなスパイスが混じり合ってるので、これがカルダモンの香りだ!と嗅ぎ分けることは難しそうですが。
自宅で使う分にはパウダータイプのものが断然使いやすくていいと思います。料理にも、お菓子にも。
ただ、チャイにはやっぱりホールタイプのものがいいと思います。もしこだわるのであれば。
頑丈な固い鞘に包まれているので、麺棒とかでガンガンと叩いて少しつぶしてから、シナモン・フェンネル・ショウガなどと一緒に鍋に入れて煮出します。とてもいい香りがします。
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あ、そうそう、インドのお菓子に使うスパイスは基本的にカルダモンだけど、フェンネル(フェンネルシード)もたまに使うみたいです。こちらもまた違った甘くて爽やかな香りがします。
フェンネルはインドレストランで最後に口直しとして供されるので、これも案外日本人に知られているものかも。フェンネルそのままのタイプと、砂糖がけになっているタイプがあります。レストランのレジあたりに置いてあるアレです。
↑これはインドでホームステイさせていただいていた時に食べさせていただいた、バーミセリを甘く煮た手作りおやつ。フェンネルで香り付けされていました。
おお、やっぱりフェンネルをお菓子の香り付けに使うんだなーとちょっと感動してしまったもの。おいしかったです。
あと、マルプアというインドのパンケーキの生地にもフェンネルを入れたりするようです。
以前ご紹介した、マルプアの簡単なレシピはこちら
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と、いうわけでインド菓子はお砂糖とカルダモン(と、たまにフェンネル)とでだいたい成り立ってるというお話でした。
実際インド菓子の基本的な材料が、お砂糖とナッツとミルクとカルダモンってイメージなんですよね。
もしもおうちでインドのお菓子を作りたい、と思ったら、とりあえずカルダモンパウダーだけは手に入れていただきたいと思います。逆に言えばカルダモンパウダーさえ入れておけばなんでもインド風(または北欧風)のお菓子になりそう。
カルダモンパウダーはS&Bさんの卓上スパイスのシリーズにも入っているので、大き目のスーパーでわりと簡単に手に入ります。ぜひ試してみてください。
ホールタイプのものはインド食材店などで。
あ、そういえば…
お菓子に使うスパイスのイメージってシナモン&ジンジャー、って最初に言いましたが…
これ、なんとなく適当に西洋菓子のイメージで言ったつもりのものだったんですが、考えてみたら和菓子に使われているスパイスがまさにシナモン(肉桂、ニッキ)とジンジャー(ショウガ)でしたね。
八つ橋とか栗饅頭、しょうが煎餅とか生姜湯…。ほんといろんなものに使われてる。
逆に和菓子にはそれ以外のスパイスを使うことってあまりないような。
シナモン&ジンジャーって実に日本的なのでは。
…私が持っていたお菓子に使うスパイスのイメージって、実は和菓子に使うスパイスのイメージから来ていたのかもしれません。
なんか今回はインド菓子に使われるスパイスの話から、最終的に自分に流れる日本人の血を実感することになっちゃったなー。